制作には全体の大きな流れがあります。
しかしこの流れはお客様から提案されるわけでありませんので、自分でどのように進めるかを身に付ける必要があります。
覚えておくと次に何をするのか、ということが見えてきますので、ここでしっかり覚えておきましょう。もし、この通りに進まない時でも大きな流れとして変わることはありませんので、臨機応変に対応していきましょう。
この流れは何度も制作をしていくうちに自然に身に付いてきますので、まずは落ち着いて1つずつ進めていきましょう。
クライアントから依頼された内容と、希望のデザインを初めに確認します。そして全体を見て、足りない部分をヒアリングしていきます。
クライアントさんは決してライティングやデザインのプロではありませんので、多くの場合は内容が不足している場合が多いです。
その場合にヒアリングシートをデザイナーがクライアントに渡す場合もありますが、いつも全てが同じ内容とは限りません。ですので、自ら作ったヒアリングシートに縛られて柔軟性を失うよりは、自分がクライアントやお客様の立場に立った時に何が足りないのかを考えてアドバイスをしたり、お互いに相談して作った方がより良い方向へ導くことができます。
「目的は何か?」ということに注目しながらヒアリングを進めていきましょう。
ヒアリングが完了したら、次は設計です。
使用する写真やイメージで、どの部分をイラストレーターで作成し、どの部分をフォトショップで作成すれば良いのかを、大まかに考えてみましょう。もちろん、変更になっても問題はありません。まずは設計の構想を立てて、どうしたら効率よくできるかを考えられる訓練をしていくことが大切です。その時の状況で臨機応変に対応していきましょう。効率が良いということは、早く作業ができるということに繋がってきます(無駄な作業時間=割の悪い仕事になってしまうので、デザインは常に効率化を意識することが重要です)
グラフィックデザイナーのソフトは基本的にイラストレーターを使用しますが、サブとして画像の修正や合成にはフォトショップを使用します。
その際のポイントとしていくつか例を挙げていますので、
ヒントとして使用してみましょう。
デザインは初めから細かいパーツを書いたり作る必要はありません。
スケッチブックやメモ帳、イラストレーターでもOKですので、まずは大きな全体の流れと構図(配置)を考えていきます。
構図を作るメリットは、全体像を把握できることと、書きながらアイデアを生み出すことができる、ということです。
イラストレーターで構図をどうやってまとめるかに慣れていない場合に、準備が無い状態で、いきなりイラストレーターに入ってしまうと、それだけで気持ちがいっぱいになってしまい、結果まとめる事ができず、時間だけが過ぎてしまい、焦ってしまう・・・という状況になりかねません。
大まかで全く問題はありませんので、いくつかアイデアを出し、ワクワクした気持ちで制作に入っていけるようにしましょう。(ここのモチベーションが崩れてしまうと最後まで苦しい状況が続いてしまうので、頭の中を整理して、リラックスした気持ちで進めていきましょう)
ラフはこのようなクオリティで問題ありません。
構図が心配な方や、構図を見せてほしい、というクライアントには、この段階で1度確認してみましょう。
また、色玉(使用する色を予め準備しておく)が必要な場合も一緒に提出しましょう。
ようやく制作に入ります。
ここからは、とにかく制作に気持ちと神経を集中していきましょう。
ただし、まだまだ細かいことに拘らずに、大まかに骨組みを構築していきましょう。
骨組みというのは、どれくらいの大きさでパーツやフォントを配置すれば良いのかや、全体の流れのことと理解していきましょう。慣れないうちは、パーツしか見えなくなることが多いので、気が付いた時には、チグハグした、バランスが不自然なデザインになることが多いのです。
具体的にはこの様な状態です・・・
全体が見えなくなるとはこういうことです。
例の写真では花畑の上に気球が浮いているのですが、すっかりこの全体を忘れてしまい気球だけに注目してしまうような状態と同じです。気球はあくまでもアクセントであり、花畑のある空間が全体像を作り上げているのです。
この全体を見直すには、1度画面を引き(ズームアウト)にしたり、席を立って眺めてみたり、それでもよくわからなくなった際は、1度手を休め、数時間経ってから再度確認するなどしてみましょう。
それでも、解決しない場合は、半日〜1日程度そのデザインから離れて、他の原稿を作るのもありです。
長時間、同じ案件の制作をしていると、このように迷走して抜け出せなくなることがあるので、手を休めることも良いデザインを制作する上で、とても大切です。
初心者の方は特にこの全体像が見えなくなる現象がありますので、作成しているパーツと全体像のバランスを考えながら進めていきましょう。
全体の制作が落ち着いたら、画面を引きにし、眺めてみましょう。
その際に、違和感の感じる部分を更に修正していきます。
「何かがおかしい・・・」と思う部分が違和感です。
しかし「何かがおかしい・・・」と思った部分だけに原因がいつもある訳ではありません。その部分を取り囲む周りかもしれないし、もしくは少し離れたところに原因があったり、全体の何かとのバランスがうまくいっていない場合もあります。
修正する場合はしっかり、どこをどうしたらうまくいくのかを考えてみましょう。
バランスとは、全部に力を入れすぎても、抜きすぎても良く無いので、デザインを制作する上で、とても重要で、ここがデザインの難しい点でもあります。
ここが、デザイナーの力量が問われるという事に繋がるので、しっかりと「情報の優先順位」のバランスをとりながら細部を整えていきましょう。
この細部のバランスを取らずに初稿を提案してしまうデザイナーもいますが、第一印象はとても大切です。第一印象でデザイナーがどれくらいのレベルなのかを見られていると言っても過言ではありませんので、その時点で完璧だと思うくらいまで仕上げることが大切です。
そうすることで校正回数も最低限で進行できることと、クライアントも「一緒に仕事をしてよかった」という安心感を与えることができます。
クライアントが、またこのデザイナーと仕事したいと思ってもらえるように、また、これからデザイナーとして仕事をしていくのであれば、ここまでの時点で自分の中の120%を出すことが目標としましょう。
細部を十分に作成ができたら、クライアントに一度提出をしましょう。
画像のみで提出するデザイナーもいますが、なるべく見栄えの良い形であるpdfで提出するのが理想的です。とても細かいことではありますが、この1つの行動で、できるデザイナー、できないデザイナーかを相手に見られていると思って初校を提案しましょう。
クライアントから修正指示をもらったら、まずは修正箇所を確認し、わからない箇所があれば質問をしましょう。わからない点を解決しないまま修正作業に入らない様にしましょう。クライアントは、伝えた修正指示に対して、何度もやり取りする事をストレスと感じてしまうので、必ず解決してから進行するようにしましょう。
修正が完了したら、再度提出です。
(7)〜(8)は繰り返し行う作業になりますので、同じように進行していきましょう。
クライアントからOK(校了)になりましたら、再度念の為、何か不自然な箇所はないか、誤字脱字はないかを確認しましょう。
印刷を手配する場合に、印刷過程で、問題が発生した場合に、その問題の原因がデザイナー側にある際は、印刷代金を支払うこともあります。Webなどとは違いこれが一番恐ろしいことなので、気を抜かずに確認していきましょう。(印刷が遅れ、印刷物の納期に間に合わない場合、大きな案件ですと損害額が大きくなってしまうため、十分注意をしましょう)
この後、入稿、または納品で終了となるのですが、入稿と納品について注意事項がたくさんありますので、しっかりと把握しておきましょう。
全てをオブジェクト化し、文字化けしないようにしましょう。
ここ数年、オンライン印刷の増加により、データの入稿方法もどんどん変化してきています。
aiで入稿の場合はepsなど配置した画像を一緒に入稿することもできますが、リンク切れなどが発生する場合もありますので、埋め込みでもOKです。オンライン印刷の場合は、埋め込みの方が入稿がとても楽なので、オススメです。
制作時にロックしたパーツは全てロックを解除しておきましょう。
ただ、ガイドラインはロックしたままでOKです。
アートボードの外に放置した素材やオブジェクトは、入稿時には必ず削除しておきましょう。
絶対にNGな訳ではありませんが、プロの仕事として、データ内を綺麗に整理整頓することを心がけましょう。この意識が、良いデザイン、良い人間関係に繋がります。
クライアントに「aiデータで納品して欲しい」という場合は、必ずアウトラインをとり、相手の使用しているイラストレーターのバージョンを確認して、ダウングレード(バージョンを下げる)して納品をしましょう。
全てのクライアントが最新のイラストレーターを使用している訳ではありません。特に、看板業者はCS3〜CS6の旧バージョンを使用している事もあるので、必ず確認しましょう。
pdf納品の場合、バージョンは、PDF/x-1a:2001一択です。これのみでOKです。
印刷が完了し、印刷物をクライアントに納品する場合は、発送までの営業日、金額、支払い方法、などしっかりと確認しましょう。
ここで料金をはっきりと伝えないと、追加でクライアントに支払って頂くことにもなってしまいますし、場合によっては、デザイナーが自ら支払うことになるかもしれないので注意が必要です。
金銭の揉め事はデザインに関わらず絶対にNGです。このトラブルがあると、次の仕事に繋がらない可能性が一気に上がります。言った、言わない、払った、払っていないなど、険悪な関係性にならないように、取引額が少額であっても、必ず確認をしておきましょう。
基本的にアウトラインなしのデータ(元データ)の納品には、慎重になりましょう。
デメリットは、自分以外のデザイナーが元データを編集できてしまうことにあります。 ということは、自分にはその仕事の追加修正の依頼は来なくなってしまうということです。
メリットは、元データをお金に変えられるという点のみとなります。元データはデザイナーの汗と涙の結晶です。無償で納品するデザイナーは、ほとんどいないでしょう。その汗と涙の結晶をお金に変えて得をするか、損をするかは、ご自身で考えて頂いてOKです。絶対にNGということでは無いので、良く考えて、決めましょう。
これは良くあることです。「アウトライン済み+画像を全て埋め込み」状態で、納品しましょう。
また、クラウドソーシングの場合、印刷手配をクライアントが行うことが多く、データの納品のみという状況が頻繁にあります。その場合も、「アウトライン済み+画像を全て埋め込み」状態で問題ありません。
これを特に気をつけて頂きたいのは、フリーランスのデザイナーです。
クライアントとデザイナーの関係にもよりますが、1度納品して終了したプロジェクトについては修正は別料金と考えることが望ましいです。
終了したプロジェクトでも、無料で修正をすると、今後も無料で修正するのが当たり前になります。またこれが続くと、いつプロジェクトが終わっているのかもわからなくなってしまいます。
取引の終了=納品 です。
納品が完了次第、別プロジェクトとし、修正料金を支払う形式で案内しましょう。相手を思いやりながらも、自分の仕事にどんな影響を与えるのかを考えて対応しでいくことで、クライアントと長いお付き合いができる様になります。
いつ請求書を出して良いか・・・ と悩んでしまう場合があります。
プロジェクトの完了(納品)次第、請求書を添付してお渡しします。
その際には、堂々と一緒に仕事ができて楽しかったこと、温かいメッセージや、クライアントさんのこれからの繁栄の言葉など、ポジティブなイメージのメッセージを添えましょう。
ただ「請求書になりますお願いいたします。」のような流れは、印象としてあまり良く無いので、常に人と人は目に見えるデザインの取引だけではなく、心と心のやり取りだということを念頭におきましょう。たとえ相手が素っ気ないタイプの方であっても、デザイナーとして、人として「お互いに良い気持ち」で取引を終わらせましょう。
最後に「ありがとうございました。またお願いします。」で終われる、気持ちの良い取引を目指しましょう。